海外でのそろばん
そろばん」はいまや国際語です。
そろばんのことを、中国語では「スワンパン」、ロシア語では「ショティ」といいますが
、アメリカやヨーロッパ諸国をはじめ、世界中で日本語の「そろばん」がそのまま使われ、
国際語になりつつあります。
『 ウェブスター 』 (世界的に権威のあるイギリスの辞典)の国際語版には、「 Soroban 」
という語が掲載されているほどです。
最近では日本だけでなく広く海外でも、そろばんは「世界最高の算数教具」との評価を得ています。
そして、算数の理解を深めるとして、学校教育にそろばんの学習が積極的に取り入れられ、成果を
上げています。
アメリカ
海外のそろばん教育への取り組みの中でも、アメリカは日系人が多いといカこともあり、ことのほか熱心
です。
1977 年には南カリフォルニア大学内に「アメリカそろばん研究センター」が設置され、そろばんの教育学的
活用を目的とした研究が進められています。
そろばんは教育的にも、子供の頭脳の発達に重要な働きをもたらすという点から注目されています。
位取りや十進法など数の基礎を理解させるすぐれた教具であり、抽象的な数を具体的な珠で表現することが理解を容易にさせ、器具を使用することが学習への積極的な態度に効果があるとして、公立学校の算数の中に採用する学校がふえています。
コンピュータ原理を開発し、世界中に電卓を普及させたアメリカで、電卓をどんなにうまく教材に使っても
養うことのできない、暗算力を高めるそろばん学習によって、算数嫌いの子供が減ったという報告もあります。
南カリフォルニア大学ではそろばんを教育課程に組み入れ、大学院修士課程に「珠算講座」を設けて、
その教育的効用を研究しています。
中国
中国では、そろばんの発祥地である日本からの働きかけにより 1979 年に「中国珠算協会」が、国家機関の一部として設立されました。この機関の発足によって、昔からあったそろばんが新しいもののように関心を集め、全国の小学生がそろばんを学んでいます。現在は 3 年生が必修で年間 36 時間を充てていますが、中国ではそろばんが日本とは違ったとらえ方をされています。
それは「三算結合教育」といって、珠算・筆算・暗算の計算方法をできるだけ同じ方式にまとめようというもので、 1985 年に国家教育委員会(文部省)が積極的に研究指導に乗り出しました。そろばん教育は小学校だけでなく、職業中学校、財経類の大学、あるいは計算人材を養成する社会人にまで普及しています。
使われているのは 5 つ珠の中国そろばんですが、日本式の小型化されたそろばんに関しカ塙まり、その改良・製造が進んでいます。
ブラジル
1956年にサンパウロ珠算学校が開設され、日系の企業、私立小・中 ・高校、日本語学校などにそろばんが広まっています。
1979 年には南米最大の銀行ならびにその付属小・中学校 16 校で、そろばん教育が始まりました。
現在のところ、多くは日系ブラジル人子弟が対象ですが、現地の新聞報道では「集中力が強まる、計算力がつくなど、学業方面に大きな効果があることが諸外国で認められている」「珠算 3 級くらいになれば立派な技術者として認められ、 1 級ともなれば電卓など及ばない速さ」と好意的に報じています。
インド
インド政府からの要請で、 1979 年に同国の教員に対し、そろばんとその指導法について集中講義が行なわれました。
講義後、珠の具象性による取り扱いが数の概念の養成や計算に役立っとして、今後の数学教育に採用したいとの感想がありました。
また「インドでは紙が非常に不足しているので、そろばんを使うことにより、紙やノートなしで計算する
ことができる」という意見もあり、思わぬメリットを気づかされました。
トンガ
同国王はそろばんのよき理解者で、「算数教育にプラスになる」として、小学校教員や教育大学の学生にそろばんの研究を指示しています。
1985 年には「トンガ珠算教育協会」が、国王の支援により設立されました。
ところが、指導者がなかなか育たないので、国費で学生を日本に派遣しそろばんを勉強させることにしました。
ラグビーで有名な大東文化大学出身のナモア君とラトウ君は、トンガからそろばん技術を身につけるために留学したことは、意外に知られていません。
ヨー口ッパ諸国
イギリスをはじめヨーロッパ諸国では、現在のところ個人のボランティア活動にとどまり、まだ公式化
されていないのが実情です。
しかし、その活動を通じて、そろばんを学習することでどのようなメリットが生じるか、などの研究や議論が高まっていまち 1987 年にはイギリスのテレビでデモンストレーションを実施。
13 歳の少年が 2 桁 × 2 桁のかけ算の答えを暗算で出し、拍手喝采を浴びました。やってみせたのがイギリスの中学生だったことが視聴者を驚かせたのか、以来問い合わせが殺到しました。
その他の国々
カナダ、メキシコ、シンガポール、べトナムなどで、現地の日本人を対象にした珠算塾、教員や大学での
講座、デモンストレーションが展開されています。
どの国でも好評で、あまり矢口られていない日本のそろばんの教育的効用に驚き、新たな講座要請が出されています。
そのほかフィリピン、タイ、オーストラリアなどでも、そろばんを研究する数学教師がふえています。
また、教育大学などでそろばんの研究を進めている国もあり、そろばんはもはや日本だけのものでは
なくなっています。

